農、食、生活、買い物、そして日々の生活。 人々の「ふれあい」について再考する場。作った人から直接買い、その感想を直接伝えることができる場です。作る人と買う人が出会い、野菜や農業、そして食べることについて話し、お互いに理解することができる場です。これらを通じ、新庄・最上に暮らす人々の生活に貢献していくことを目指します。

2011年から始まり、2017年で7年目を迎えるキトキトマルシェ。開催当初は数百人だった来場者も現在では2000人以上が集まるほど注目度の高いマルシェとなり、会場には、家族連れ、カップル、あらゆる年齢層の市民が集います。テーマは、カレーフェス、肉フェス、パン祭り、お米祭り、フリーマーケットなど、とにかくバラエティー豊か。テーマに合わせて新庄市だけでなく、県内外から50近いブースが集結します。

会場となる新庄市のエコロジーガーデンは蚕糸試験場の跡地。建造物登録有形文化財としても登録されている歴史ある建造物です。古き良き面影はそのままに、地元のボランティアによってリノベーションされ、現在はマルシェ、ワークショップなど市民の活動の場となっています。カフェやシェアブックスペースもあり、季節ごとの風景を眺めながらのんびり過ごすのもオススメです。

キトキトマルシェを主催するのは、新庄市出身の吉野敏充さん。高校卒業後、東京でデザイナーとして働いていました。2010年に新庄にUターン。デザイン事務所を運営しつつ家業でもある農業にも従事。キトキトマルシェをはじめとした新庄・最上地域を盛り上げるイベントを企画しています。キトキトマルシェを始めたきっかけについて伺うと、「農産物、工芸品、この地域にはいいものがたくさんあって、でも、それを表現できずにいる人もいて。それを僕ら若い世代が掘り起こしていくことが役割だと思いました」とコメント。これからのマルシェについて「地元のいくつもの点がマルシェでつながってくれればと思います。これからも僕たちがその点をつないでいけたら。無理せず自由に楽しみながら、ここで過ごしてほしいです」と、想いを熱く語ってくれました。

こちらは1回目から出店している、「TAN　FARM」の丹裕也さん。「キトキトマルシェの良さは、売り手と買い手の顔が見えること。昔は当たり前に、近所の顔見知りの店で会話をしながら買い物をしていたけど、いまはネット通販や、大型ショッピングモール…。買い物をしても相手の顔が見えにくい。売る側としては、対面して、ふれあって、納得のいくものを提供したいですから」と話す丹さんの店先に並べられているものは、バジルソルト、バジルティー、ドライフラワーなど。素材からすべて手作りです。「5年出店し続けて、来てくれる人も増えて、キトキトマルシェは、地元に対する愛情、自分の成長など、のびしろが見える場所なので、これからも出店していきたい」と意欲を語ってくれました。質問にも一つひとつに真剣に答えてくれる、来店客にも笑顔で丁寧に接する姿が印象的で、店に並ぶ商品は丹さんそのものに見えました。

冬の訪れを控えた11月20日、この日は2016年最後のキトキトマルシェ。時折冷たい雨が降り、気温も低い一日でしたが、落ち葉のじゅうたんが一面に広がるエコロジーガーデン。寒いけどどこか暖かい、そんな雰囲気を感じてか、オープンとともに続々とお客さんが集まってきました。

この日のテーマは“パンと麺”。新庄市や近隣の市町村、遠くは秋田、仙台からも出店していて、それぞれ自慢のパンと温かな麺類、野菜、果物、工芸品などが並びます。パンのブースではサンドイッチ、キッシュ、昔懐かしいコッペパンなどが勢揃い。大人も子供もその種類の多さと、おいしそうなパンの香りにおもわず顔がほころびます。

「一度にたくさんの店のパンを購入できる機会は滅多にないので、オープンと同時に来ました」と70km以上離れた山形市から来たお客さん。「大人も子供も楽しめる、マルシェの雰囲気が好きで毎回家族で来ています」と家族との時間をのんびり楽しむお客さん。

おいしいものが食べたい、新鮮な野菜が欲しい、外で走り回りたい、知り合いの顔を見に来た、ここに集まる人々の目的はそれぞれ。仲間と一緒でもひとりでも思い思いの時間を過ごせる、でもどこかで繋がっているような…キトキトマルシェに来るとそんな気持ちになります。